病院や医療リハビリの印象が強い作業療法士(OT)ですが、
近年では介護分野での活躍がますます広がっています。
高齢化が進む日本社会において、介護施設やデイサービス、訪問リハビリといった場で、
利用者一人ひとりの「できる力」を引き出す専門職として注目されています。

医療的なリハビリでは「機能の回復」を目指しますが、
介護分野での作業療法士は“その人らしい生活の再構築”を支援するのが大きな特徴です。
食事・着替え・入浴などの日常動作から、趣味や社会参加のサポートまで、
生活そのものをリハビリとして捉える――それが、介護領域のOTの仕事です。
作業療法士(OT)とは?
作業療法士(Occupational Therapist/OT)は、
身体・精神・認知などに障がいを持つ方に対して、日常生活に必要な機能回復・維持・向上を目的とした支援を行う専門職です。
「作業」とは、単なる“仕事”ではなく、人の生活を構成するすべての活動を意味します。
食事、着替え、家事、外出、買い物、趣味、社会参加――それらを安全に行うための訓練や環境づくりを行います。
介護の現場では、高齢者の身体機能・認知機能の低下に対して、
残存能力を活かした“できること”を増やしていく支援を行います。
医師や看護師、介護士、理学療法士などと連携しながら、
「生活の自立」「笑顔で過ごせる時間」を取り戻すことが目標です。
介護分野での作業療法士の主な勤務先
- 介護老人保健施設(老健):在宅復帰を目指す高齢者に対してリハビリを実施。
- 特別養護老人ホーム(特養):身体機能維持・認知症ケアなどを中心にサポート。
- デイサービス(通所リハビリ):1日利用者に対し、個別・集団リハビリを実施。
- 訪問リハビリ:利用者の自宅に訪問し、生活環境に合わせた訓練や助言を行う。
- グループホーム・小規模多機能型施設:認知症高齢者への日常動作訓練。
こうした介護施設では、医療機関に比べて“生活に密着したリハビリ”が中心。
ベッド上だけでなく、居室・リビング・庭など、生活空間全体がリハビリの場になります。
介護における作業療法士の役割
介護施設やデイサービスでは、作業療法士が担う役割は多岐にわたります。
- 身体機能訓練(起き上がり・歩行・食事・入浴などの日常動作)
- 手工芸・園芸・調理など、生活動作を兼ねた作業活動
- 認知症ケア・記憶訓練・脳トレーニング
- 住宅改修・福祉用具の選定・環境調整
- 介護スタッフへのリハビリ指導・介助方法の助言
特に介護施設では、医療的なリハビリというよりも、
「今ある力を維持し、できるだけ長く自立した生活を続ける」ことを目的としています。
そのため、リハビリだけでなく、利用者の“生活をデザインする”視点が大切になります。

働く場所による違い
① 老健・特養では、医療的管理のもとでリハビリを行うため、
医師・看護師・理学療法士・介護士など他職種連携が欠かせません。
週単位でリハビリ計画を立て、身体機能の維持とADL(日常生活動作)の向上を目指します。
② デイサービスでは、利用者とじっくり関わる時間が多く、
レクリエーションや趣味活動を通じた“楽しいリハビリ”を提供。
体操やゲーム形式の機能訓練を通して、利用者の笑顔を引き出します。
③ 訪問リハビリでは、在宅での生活動作訓練・住宅改修の提案など、
実際の生活環境での支援が中心になります。
「家で過ごしたい」という高齢者の希望を叶えるための重要な仕事です。
介護現場の作業療法士の一日
- 9:00 出勤・朝礼・スタッフミーティング
- 9:30 個別リハビリ(立ち上がり・歩行訓練など)
- 11:00 入浴前後の動作訓練・介助指導
- 12:00 昼食・口腔機能訓練・食事動作観察
- 13:00 集団レクリエーション・手工芸・音楽療法など
- 15:00 リハビリ記録・介護スタッフとの情報共有
- 17:00 翌日のプラン作成・カンファレンス
医療現場と比べると時間の流れは穏やかですが、
その分、利用者一人ひとりの「人となり」に寄り添える仕事でもあります。
給与・待遇・働き方
介護分野の作業療法士の平均年収は350〜480万円程度。
勤務施設によっては、経験や役職に応じて年収500万円以上も目指せます。
また、夜勤がない職場が多く、日勤固定・週休2日制が一般的。
家庭やプライベートとの両立がしやすい環境が整っています。
加えて、介護業界は今後も需要が拡大する分野。
厚生労働省のデータでは、2025年には作業療法士の約25%が介護施設で働くと予測されています。
安定性と将来性を兼ね備えたキャリアパスが描ける職種です。
求められるスキルと人柄
介護分野で働くOTには、医療的な技術以上に、人に寄り添う力が求められます。
- 利用者や家族と丁寧にコミュニケーションをとる力
- 介護スタッフ・看護師など多職種とのチーム連携
- その人の“生活の目標”を共に考える観察力と共感力
- 安全で効果的な動作訓練を計画・実践する分析力
また、近年は認知症ケアの現場も増えており、
心理面への理解やレクリエーション企画などの柔軟性も求められています。
作業療法士のキャリアパス
介護施設で経験を積むことで、以下のようなキャリアアップが可能です。
- 主任・リハビリ責任者として現場をまとめる
- リハビリ特化型デイサービスの管理職や教育担当
- 訪問リハビリ専門OTとして独立・在宅支援分野へ
- 地域包括支援センターでの相談員・アドバイザー
また、介護福祉士やケアマネジャーなど他資格とのダブルライセンスを取得することで、
より幅広い分野で活躍することも可能です。

介護現場で働くOTのやりがい
リハビリを通じて、利用者が再び「できるようになる」瞬間に立ち会えること。
それが、この仕事の最大のやりがいです。
杖を使って歩けるようになった、ボタンが自分で留められた、
家族と一緒に食卓を囲めた――そうした小さな“できた”が、
利用者にとっても、OTにとっても大きな喜びです。
さらに、医療機関と違い、介護施設では長期的に利用者と関われるため、
信頼関係を築きながら「人生を支える仕事」ができます。
まとめ:介護×リハビリの最前線 ― 作業療法士の未来
介護現場での作業療法士は、“生活の再生”を支えるスペシャリストです。
単に身体を動かすリハビリではなく、生きる力・暮らす力を取り戻す仕事。
利用者が「自分らしく生きる」ためのサポートをするという点で、
これからの超高齢社会に欠かせない存在です。
医療現場での経験を活かして介護に転職するOTも増えており、
リハビリの視点から介護業界を支えるプロフェッショナルとしての需要は年々高まっています。
“リハビリ=病院”という時代はもう終わり。
これからは、“リハビリ=生活の中”へ――。
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あなたの専門知識と温かい心が、誰かの「もう一度できた!」という笑顔を生み出します。
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