医療現場では、人工呼吸器、透析装置、心臓ペースメーカーなど、
さまざまな生命維持装置が使われています。
これらの装置を正しく管理・操作し、患者さんの命を支えているのが臨床工学技士です。
「医療機器の専門家」と聞くと少し難しそうですが、実は臨床工学技士は医療×工学の知識を融合させた、
医療現場になくてはならない存在。
医師や看護師とチームを組みながら、最先端医療を支える仕事です。
この記事では、臨床工学技士の仕事内容、資格取得方法、働く場所、年収、そして将来性までをわかりやすく解説します。

臨床工学技士とは ― 医療機器の管理と操作のプロフェッショナル
臨床工学技士(Clinical Engineer/CE)は、
医療機器の操作・保守・点検・安全管理を専門に行う国家資格職です。
正式には「臨床工学技士法(1987年施行)」に基づく国家資格であり、
医療機器の安全な運用を通じて、医師の診療行為をサポートします。
つまり臨床工学技士は、医療機器を“使う”だけでなく“守る”専門職。
その活躍範囲は、手術室・集中治療室・透析室・救急現場など、多岐にわたります。
臨床工学技士の主な仕事内容
臨床工学技士の業務は、医療機器の種類や配属先によってさまざまですが、
大きく分けると次の3つの領域で活躍しています。
① 生命維持管理装置の操作・監視
人工呼吸器、人工心肺装置、人工透析装置など、命を支える装置を安全に使用・監視します。
心臓手術や集中治療室(ICU)では、医師と連携してリアルタイムに装置を操作し、
わずかな異常も見逃さない緊張感ある業務です。
② 医療機器の保守・点検
臨床工学技士は「医療機器の整備士」としての役割も担っています。
装置の校正・点検・修理を行い、万一のトラブルを未然に防ぎます。
機器管理室で複数の病棟や手術室にある機器を一元管理する病院も増えています。
③ チーム医療への参加
臨床工学技士は、医師・看護師・放射線技師など他職種と協働し、
「チーム医療」の一員として患者さんの治療を支えます。
特に、心臓カテーテル検査室や手術室では、手技中のモニタリングや機器操作を担当します。

臨床工学技士が働く場所
臨床工学技士の活躍の場は病院だけではありません。
以下のようなさまざまな現場で必要とされています。
- 大学病院・総合病院
- 透析クリニック
- 集中治療室(ICU・CCU)
- 手術室・カテーテル室
- 医療機器メーカー・メンテナンス会社
- 研究機関・教育機関
特に近年は高齢化の進展とともに透析患者が増加しており、
透析医療の分野での需要が非常に高いのが特徴です。
臨床工学技士になるには ― 資格取得の流れ
臨床工学技士は国家資格のため、指定の教育課程を修了し、
国家試験に合格する必要があります。
【資格取得までのステップ】
- 文部科学省・厚生労働省指定の養成校(3年制・4年制)に入学
- 医療・工学・生理学・電気機器・臨床実習などを履修
- 臨床工学技士国家試験に合格
全国には大学・短大・専門学校を含め約90校以上の養成機関があります。
試験の合格率は例年90%前後と高く、しっかり学べば十分合格を目指せる資格です。
臨床工学技士の年収・給与
臨床工学技士の平均年収は400万〜550万円前後。
勤務先や経験によって差がありますが、安定した給与水準です。
- 新卒・初任給:月給20万〜23万円
- 経験5年目:月給25万〜30万円
- 主任・管理職クラス:年収600万円以上
透析や心臓手術などの専門分野を極めることで、
手当や資格給が上乗せされる場合もあります。
臨床工学技士のやりがい
臨床工学技士のやりがいは、何よりも「命を支える現場にいること」です。
- 自分が操作した装置で患者の命が守られた瞬間
- 医師や看護師とチームで治療を成功させたときの達成感
- 医療技術の進化を間近で体感できる喜び
- トラブルを未然に防いだ時の責任感と誇り
患者さんと直接言葉を交わすことは少なくても、
自分の技術が誰かの命を救うことにつながっている――
それが臨床工学技士という仕事の本質です。
臨床工学技士の大変なところ
- 24時間体制の緊急対応(当直・オンコール)がある
- 医療機器のトラブルに即対応が求められる
- 専門知識のアップデートが欠かせない
- 精神的プレッシャーの強い現場もある
しかしその分、責任とやりがいの大きな職種です。
トラブルを冷静に判断し、チームで解決に導く力が求められます。
臨床工学技士に向いている人の特徴
- 理系分野(物理・電気・生物など)が好き
- 冷静な判断力がある
- チームワークを大切にできる
- 細かい作業やデータ分析が得意
- 医療現場に貢献したいという意欲が強い
医療機器を通して「患者さんの命を支える」職種なので、
技術と責任感の両方が求められます。
研究職・エンジニア・理学療法士など理系職から転職する人も多いです。
臨床工学技士のキャリアパスと将来性
医療技術の進化により、臨床工学技士の活躍の場はさらに広がっています。
- 透析技士:慢性腎不全患者への血液透析治療を担当。
- 心臓カテーテル技士:心疾患の検査・治療におけるモニタリングや装置操作。
- 手術室技士:人工心肺装置や電気メスなどの操作補助。
- 医療機器管理者:全病院の医療機器を統括管理。
- 医療機器メーカー技術職:営業・開発・講習担当として技士経験を活かす。
AI・ロボット手術・遠隔医療の導入が進む中で、
臨床工学技士は「医療とテクノロジーをつなぐ存在」として、
今後ますます重要性を増していくでしょう。

臨床工学技士の今後のトレンド
臨床工学技士の分野では、以下のような新しい動きが注目されています。
- 医療機器データのAI分析:機器の稼働データを活用して異常予測を行う。
- 遠隔モニタリング:在宅透析・在宅呼吸管理などリモート支援の拡大。
- 臨床研究・教育分野への進出:医療安全や教育研修に携わる技士が増加。
「医療機器の専門家」から「医療データの専門家」へ――
臨床工学技士はこれからの医療の在り方を支える中核的職種へと進化しています。
まとめ:医療を“支える技術者”という誇り
臨床工学技士は、目立たないけれど欠かせない存在です。
最先端の医療技術を支え、医師や看護師と共に命の現場を守っています。
技術と人間力の両方が求められる難しい仕事ですが、
その分だけ人の命を支えるという確かな実感を得られる職業です。
医療の裏側で、人を支える。
それが臨床工学技士という仕事の本当の魅力です。
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あなたの技術が、医療現場の安心と命をつなぐ力になります。
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