管理栄養士・栄養士の活躍の場は年々広がっていますが、その中でも「医療領域」は専門性が高く、最も社会的意義の大きいフィールドといえます。

病院・クリニックで働く栄養士は単なる“食事を作る人”ではありません。
患者さんの病状に合わせて栄養管理計画を立て、医師・看護師・薬剤師・リハビリスタッフと協力しながら、治療の一部として栄養サポートを行う専門職です。
特に近年は、NST(栄養サポートチーム)の機能強化が全国で進み、管理栄養士の配置は医療現場において急速に拡大。
厚生労働省の調査では、病院の約8割が管理栄養士を配置しており、今後はより専門性の高い役割が求められています。
今回は、保育・介護とはまったく異なる、医療領域で働く管理栄養士・栄養士のリアルを徹底解説します。
- 医療現場での管理栄養士の役割とは?
- ① 栄養管理計画書の作成(入院時)
- ② NST(栄養サポートチーム)での活動
- ③ 生活習慣病への栄養指導
- ④ 摂食・嚥下機能の評価(STと連携)
- ⑤ 給食管理・衛生管理
- 医療領域ならではの魅力
- ① “治療の一部として関われる”唯一の栄養職
- ② 専門性が身につく(臨床栄養のスキル)
- ③ チーム医療が好きな人に向いている
- ④ 病院はキャリアパスが豊富
- 医療現場の管理栄養士の1日の流れ(例)
- 医療の管理栄養士の給料相場(2025年版)
- 医療の管理栄養士に向いている人
- 医療現場で管理栄養士が求められる理由
- ① 感染症以降、栄養管理の重要性が急浮上
- ② 高齢化で栄養不良患者が増加
- ③ 診療報酬改定で栄養介入が評価される時代に
- 管理栄養士の医療転職が人気の理由
- まとめ|医療の管理栄養士は“治療の一員”として活躍できる専門職
医療現場での管理栄養士の役割とは?
医療機関の管理栄養士は、主に以下の専門業務に携わります。
① 栄養管理計画書の作成(入院時)
入院患者一人ひとりの状態を評価し、栄養管理計画書(NCP)を作成します。
体重・BMI・血液データ(Alb、CRPなど)、食事摂取量、嚥下状態、疾患名、治療方針など、多角的にチェックし、最適な栄養介入を計画します。
② NST(栄養サポートチーム)での活動
医師・看護師・薬剤師・ST・PTなどと連携し、栄養不良の患者をサポート。
特に近年増えているサルコペニア・フレイルへの介入は管理栄養士の専門領域です。
診療報酬でもNST加算が導入され、介入の重要性はさらに高まっています。
③ 生活習慣病への栄養指導
糖尿病、高血圧、脂質異常症、腎臓病などの外来患者へ、個別栄養指導を実施します。
1回20〜30分の指導で、年間の延べ件数は中規模病院でも1,000件を超えることがあります。
④ 摂食・嚥下機能の評価(STと連携)
医療の場では、管理栄養士が嚥下調整食の基準(学会分類2021)に従って、食事形態を調整。
STと連携し、誤嚥リスクの軽減と安全な食事提供をサポートします。
⑤ 給食管理・衛生管理
大量調理の現場として、医療施設の食事提供は1日数百〜千食以上。
衛生管理(HACCP)や、仕入れコスト管理など、裏方の業務も重要です。

医療領域ならではの魅力
① “治療の一部として関われる”唯一の栄養職
病院での管理栄養士は、単なるサポートではなく、治療効果を引き上げる存在。
例えば、術前・術後の食事や、低栄養患者への介入は、直接的に回復速度を左右します。
② 専門性が身につく(臨床栄養のスキル)
- 血液検査の読み取り
- 栄養障害の判定(MNA、GLIM基準など)
- 栄養補給(経腸・静脈栄養)の基礎知識
- 疾患別栄養管理(腎・糖尿・心疾患など)
保育・介護と比較すると、業務の医学的知識の深さが圧倒的に異なります。
③ チーム医療が好きな人に向いている
多職種が同じ患者を支える“医療チーム”は、管理栄養士の存在を非常に大切にしています。
医師から相談されたり、看護師から「この方、食べてなくて…」と頼られたり、やりがいが大きい分野です。
④ 病院はキャリアパスが豊富
例えば…
- NST専門療法士
- 糖尿病療養指導士(CDEJ)
- 在宅訪問栄養指導の専門家
- 病院管理職(栄養科長など)
- 臨床研究への参加
医療領域は、資格を活かした“専門キャリア”を築きやすいのが特徴です。
医療現場の管理栄養士の1日の流れ(例)
中規模病院で働く管理栄養士の例を紹介します。
- 08:30 出勤・厨房ラウンド・衛生チェック
- 09:00 入院患者の栄養アセスメント(採血データ確認)
- 10:30 NSTカンファレンス
- 12:00 食札確認・配膳チェック
- 13:00 休憩
- 14:00 外来栄養指導(糖尿病・腎臓病など)
- 15:30 栄養管理計画書の作成・記録
- 17:00 退勤
臨床と事務がバランスよく配置され、医療のプロとして働けます。
医療の管理栄養士の給料相場(2025年版)
- 正社員:月給21〜30万円(年収300〜430万円)
- 主任クラス:年収450万〜550万円
- パート:時給1,200〜1,600円
特に都市部の病院では給与が上がってきており、NST加算導入医療機関は待遇が良い傾向があります。
医療の管理栄養士に向いている人
- 医療や栄養学が好き
- 血液データを見るのに抵抗がない
- 患者さんの治療に寄り添いたい
- 多職種と関わるのが好き
- 専門性を高めたい
逆に、「厨房だけの仕事がしたい」という場合は医療以外(保育園・介護施設・企業給食)が向いています。
医療現場で管理栄養士が求められる理由
医療領域のニーズが急拡大している理由は、大きく3つあります。
① 感染症以降、栄養管理の重要性が急浮上
入院時の低栄養は、治療成績に直結することが明確になり、
医師が積極的に栄養士に相談する時代になりました。
② 高齢化で栄養不良患者が増加
75歳以上の約25%が低栄養リスクといわれ、病院での栄養介入は必須に。
特に糖尿病・心疾患・がん患者の栄養指導需要は年々増加中です。
③ 診療報酬改定で栄養介入が評価される時代に
- NST加算
- 外来栄養食事指導料
- 入院時栄養特別管理加算
これらの加算により、病院内で栄養士の役割が明確に重要視されるようになりました。
管理栄養士の医療転職が人気の理由
- 臨床経験が将来どの分野でも通用する
- 専門資格の取得チャンスが多い
- 安定して長く働ける
- 患者さんから直接感謝される
- キャリアアップしやすい
医療で培った経験は、介護・訪問栄養・保健センターなど
どの領域でも評価される“最強の基盤”になります。

まとめ|医療の管理栄養士は“治療の一員”として活躍できる専門職
医療領域で働く管理栄養士・栄養士は、
単に「食事を作る」だけではなく、治療効果を高める重要な専門職です。
病院には必ず栄養に関する課題があります。
その課題を見つけ、改善し、患者さんの回復を支える。
それが医療の管理栄養士の最大の仕事です。
医療の専門知識を深めたい、チーム医療で活躍したい、
人の健康に真正面から向き合いたい。
そんな方にとって、医療領域は最高のフィールドになります。
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