医療現場で求められる管理栄養士・栄養士とは

管理栄養士・栄養士の活躍の場は年々広がっていますが、その中でも「医療領域」は専門性が高く、最も社会的意義の大きいフィールドといえます。

病院・クリニックで働く栄養士は単なる“食事を作る人”ではありません。
患者さんの病状に合わせて栄養管理計画を立て、医師・看護師・薬剤師・リハビリスタッフと協力しながら、治療の一部として栄養サポートを行う専門職です。

特に近年は、NST(栄養サポートチーム)の機能強化が全国で進み、管理栄養士の配置は医療現場において急速に拡大。
厚生労働省の調査では、病院の約8割が管理栄養士を配置しており、今後はより専門性の高い役割が求められています。

今回は、保育・介護とはまったく異なる、医療領域で働く管理栄養士・栄養士のリアルを徹底解説します。


医療現場での管理栄養士の役割とは?

医療機関の管理栄養士は、主に以下の専門業務に携わります。

① 栄養管理計画書の作成(入院時)

入院患者一人ひとりの状態を評価し、栄養管理計画書(NCP)を作成します。
体重・BMI・血液データ(Alb、CRPなど)、食事摂取量、嚥下状態、疾患名、治療方針など、多角的にチェックし、最適な栄養介入を計画します。

② NST(栄養サポートチーム)での活動

医師・看護師・薬剤師・ST・PTなどと連携し、栄養不良の患者をサポート。
特に近年増えているサルコペニア・フレイルへの介入は管理栄養士の専門領域です。

診療報酬でもNST加算が導入され、介入の重要性はさらに高まっています。

③ 生活習慣病への栄養指導

糖尿病、高血圧、脂質異常症、腎臓病などの外来患者へ、個別栄養指導を実施します。
1回20〜30分の指導で、年間の延べ件数は中規模病院でも1,000件を超えることがあります。

④ 摂食・嚥下機能の評価(STと連携)

医療の場では、管理栄養士が嚥下調整食の基準(学会分類2021)に従って、食事形態を調整。
STと連携し、誤嚥リスクの軽減と安全な食事提供をサポートします。

⑤ 給食管理・衛生管理

大量調理の現場として、医療施設の食事提供は1日数百〜千食以上。
衛生管理(HACCP)や、仕入れコスト管理など、裏方の業務も重要です。

医療領域ならではの魅力

① “治療の一部として関われる”唯一の栄養職

病院での管理栄養士は、単なるサポートではなく、治療効果を引き上げる存在
例えば、術前・術後の食事や、低栄養患者への介入は、直接的に回復速度を左右します。

② 専門性が身につく(臨床栄養のスキル)

  • 血液検査の読み取り
  • 栄養障害の判定(MNA、GLIM基準など)
  • 栄養補給(経腸・静脈栄養)の基礎知識
  • 疾患別栄養管理(腎・糖尿・心疾患など)

保育・介護と比較すると、業務の医学的知識の深さが圧倒的に異なります。

③ チーム医療が好きな人に向いている

多職種が同じ患者を支える“医療チーム”は、管理栄養士の存在を非常に大切にしています。
医師から相談されたり、看護師から「この方、食べてなくて…」と頼られたり、やりがいが大きい分野です。

④ 病院はキャリアパスが豊富

例えば…

  • NST専門療法士
  • 糖尿病療養指導士(CDEJ)
  • 在宅訪問栄養指導の専門家
  • 病院管理職(栄養科長など)
  • 臨床研究への参加

医療領域は、資格を活かした“専門キャリア”を築きやすいのが特徴です。


医療現場の管理栄養士の1日の流れ(例)

中規模病院で働く管理栄養士の例を紹介します。

  1. 08:30 出勤・厨房ラウンド・衛生チェック
  2. 09:00 入院患者の栄養アセスメント(採血データ確認)
  3. 10:30 NSTカンファレンス
  4. 12:00 食札確認・配膳チェック
  5. 13:00 休憩
  6. 14:00 外来栄養指導(糖尿病・腎臓病など)
  7. 15:30 栄養管理計画書の作成・記録
  8. 17:00 退勤

臨床と事務がバランスよく配置され、医療のプロとして働けます。


医療の管理栄養士の給料相場(2025年版)

  • 正社員:月給21〜30万円(年収300〜430万円)
  • 主任クラス:年収450万〜550万円
  • パート:時給1,200〜1,600円

特に都市部の病院では給与が上がってきており、NST加算導入医療機関は待遇が良い傾向があります。


医療の管理栄養士に向いている人

  • 医療や栄養学が好き
  • 血液データを見るのに抵抗がない
  • 患者さんの治療に寄り添いたい
  • 多職種と関わるのが好き
  • 専門性を高めたい

逆に、「厨房だけの仕事がしたい」という場合は医療以外(保育園・介護施設・企業給食)が向いています。


医療現場で管理栄養士が求められる理由

医療領域のニーズが急拡大している理由は、大きく3つあります。

① 感染症以降、栄養管理の重要性が急浮上

入院時の低栄養は、治療成績に直結することが明確になり、
医師が積極的に栄養士に相談する時代になりました。

② 高齢化で栄養不良患者が増加

75歳以上の約25%が低栄養リスクといわれ、病院での栄養介入は必須に。
特に糖尿病・心疾患・がん患者の栄養指導需要は年々増加中です。

③ 診療報酬改定で栄養介入が評価される時代に

  • NST加算
  • 外来栄養食事指導料
  • 入院時栄養特別管理加算

これらの加算により、病院内で栄養士の役割が明確に重要視されるようになりました。


管理栄養士の医療転職が人気の理由

  • 臨床経験が将来どの分野でも通用する
  • 専門資格の取得チャンスが多い
  • 安定して長く働ける
  • 患者さんから直接感謝される
  • キャリアアップしやすい

医療で培った経験は、介護・訪問栄養・保健センターなど
どの領域でも評価される“最強の基盤”になります。

まとめ|医療の管理栄養士は“治療の一員”として活躍できる専門職

医療領域で働く管理栄養士・栄養士は、
単に「食事を作る」だけではなく、治療効果を高める重要な専門職です。

病院には必ず栄養に関する課題があります。
その課題を見つけ、改善し、患者さんの回復を支える。
それが医療の管理栄養士の最大の仕事です。

医療の専門知識を深めたい、チーム医療で活躍したい、
人の健康に真正面から向き合いたい。
そんな方にとって、医療領域は最高のフィールドになります。


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